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アメリカは二度と偉大な国にはなれない 〜2016年大統領選挙に見えた平等主義の死

2016年11月、トランプ新大統領誕生というニュースが世界を駆け巡り、各地ではさまざまな思惑がうごめいて悲喜こもごもです。
このアメリカ人の選択は、アメリカという国が体現してきた価値観をアメリカ人自身が否定したという意味で、とても重大なものです。
アメリカの有権者の約半数は気づいていないかもしれませんが、トランプ氏が選挙中に連呼していたキャッチフレーズ「アメリカを再び偉大な国にする」という言葉は、彼が選ばれたことによって完全に不可能になってしまいました。

◎アメリカが体現する価値観

アメリカの独立宣言には、次のように書かれています。

すべての人間は平等につくられていて、生存、自由、幸福の追求という奪うことのできない権利を造物主により与えられている。

ここにある「平等」と「自由」こそが、アメリカという国の根幹をなす価値観でした。
この価値観が全人類に対しても平等に広がるべきである、という思想こそが、アメリカを国際社会での主導的な立場に押し上げ、偉大と呼ばれる国にしていたのです。
むろん、この思想には副作用もありました。その押し付けがましさから、アメリカは一部の国や人から蛇蝎のごとく嫌われ、攻撃の対象になってきました。
しかしながら、全人類が平等に自由であるべきだという偉大な理想が間違いであるとは、私には思えないのです。相手の自由をふみにじってまでこの思想を押し付けた手法こそが、問題視されるべきでしょう。

◎アメリカ人が選んだもの

ある意味では、2016年のアメリカ大統領選挙において争われたのは、「既存の政治=平等と自由という思想の強引な輸出」と「新たな政治=自国民のみを対象とした平等と自由」という価値観だったように思います。
そして、有権者は、平等と自由を自国民のみに適用することを選んだのです。これは、社会の格差が広がったこともあり、「よその国のことまで考えていられない」と感じる人が増えたことの証拠なのでしょう。
そう考えると、トランプ氏の当選はごく自然なできごとです。
しかし、その選択に付随する副作用は甚大なものです。
自国のことを中心に考えるようになったアメリカは、国際社会において主導的な立場に立つことはなくなるでしょう。内向きになったアメリカは、多様な価値観や才能を受け入れて多くの革新を起こしてきたアドバンテージを失うことでしょう。
しかし、それが、民主主義のルールに基づいてアメリカ国民が選んだ結果なのですから、仕方ありません。

◎これから起きること

背景にある思想の問題は別にして、2016年のアメリカと同じようなことは日本でも起こりました。2009年の自民党政権から民主党政権への交代です。既存政治への不満が爆発して新しい風を求めた日本国民の決断が、その後どうなったのかは皆さんご存知の通りです。
トランプ氏は、その選挙中の過激な言葉ほどには、物事を変えることはできないはずです。数年後、彼に投票した有権者たちは首を傾げ始めるでしょう。「下品な発言には目をつむって変化を求めて選んだ大統領なのに、なんだかあまり変わらないな……」と。それ以前に、人気取りのために憎悪をあおったトランプ氏の手法は、一部の人々に永遠に受け入れられないことでしょう。その根強い反発と戦う4年間に、トランプ氏はどこまでのことができるのでしょうか。
その手腕次第では、2020年の大統領選挙の段階で「変えなければ良かった」という反動が起こりかねません。
しかし、その段階ではもう旧来の「平等と自由という思想の強引な輸出」という思想には戻せません。国際社会も、そうコロコロと方針転換する国を認めるはずがありませんので。2020年までの4年間に失われるであろうものよりも、今回の選挙結果によって失われたもののほうが大きいのです。

◎求められる新たな思想

国境を超えた平等主義が、それを主導してきた国自身によって否定された今、国際社会で求められる新たな思想はなんでしょうか?
私自身も明確な答えを持っているわけではありませんが、それは「和」ではないかと思っています。
「和」すなわち「寛容」や「許容」と呼ばれるものです。もしくは「共感」や「尊重」なのかもしれません。
他者の立場に共感して尊重できない者すらも、寛容に許容する。
それが、来るべき時代の中心的な思想になっていけば、少しは暮らしやすい世界になるのではないか。私はそんな夢想をしています。
そして、もしも作家としての私にそのような力量とチャンスがあるのであれば、「和」によっておだやかに融和した未来の世界を描いてみたいと思います。

そのためにも、まずはもう少し腕を磨かねば(笑)


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