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作家のおすすめ小説「SF」編

いわゆるサイエンス・フィクションという小説のジャンルは、絶滅危惧種です。SFと銘打つだけで売れなくなるから、俺の作品はSFと呼ばずにサスペンスと呼べ、なんてことを言った作家がいるとかいないとか(^^)
そんな状態なので、あまりSF小説をネタに書きたくはなかったのです。下手なことを書くとマニアに挙げ足取りをされたりして、面倒なことこの上ないのです。どうせ、SFなんて一部の変態マニアが勝手に盛り上がっているだけの、狭い世界の話なのですから、ほうっておけばいいんです。

ただ、その変態マニアの1人として、私にはこの絶滅危惧ジャンルを布教する使命があります(^^)
なので、SFにはちょっと興味があるけど、あんまり熱く語られても困る、といったレベルの初心者の皆さんに、わかりやすくご紹介しましょう。

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』

月面の調査中に、宇宙服を着た死体が見つかります。調べるうちに、その人物は50,000年前に死んでいたことが判明。なぜ、そんな時代の人物が宇宙服を着て月に? 壮大な謎解きの物語です。
ありえないはずの現実の裏にひそむ謎が徐々に解き明かされていく展開は、知的興奮を刺激されっぱなしです。さらに、この作品を単なる謎解きではなくロマンあふれる壮大な物語へと昇華させているエピローグは、必読です。

田中芳樹『銀河英雄伝説』

星間戦争が勃発した時代、『常勝の天才』に率いられた帝国軍と、『不敗の魔術師』が奮闘する同盟軍との戦いを描いた作品。天才を取り巻く個性あふれる将軍たちと、魔術師を支える魅力的な仲間たちが、物語を彩ります。
この物語は、現代にも通じる普遍的なテーマが軸になっています。人格・能力ともに申し分のない人物による独裁政治と、保身に走ってばかりいる政治屋たちによる民主政治、はたしてどちらが良いのか?
その結末は、あなたの目で確かめてみてください。

以上、おためしあれ(^^)

作家のおすすめ小説「ファンタジー」編

ファンタジー小説というジャンルを確立し、単なる「子供向けのおとぎ話」という次元から「大人も楽しめる文学作品」へと昇華させたのは、トールキンの『指輪物語』であると私は確信しています。
が、『指輪物語』を小説として人におすすめできるかというと、それは無理な相談です。作者のトールキンという人はもともと学者だったこともあり、とにかくヘタクソ。内容はすごいのに、小説としての作法がなっちゃいないのですね。

というわけで、今回おすすめするファンタジー小説は、ちょっとひねってみました。

バーバラ・ハンブリー『ダールワス・サーガ』

異世界のトラブルに巻き込まれた現代のアメリカ人の男女が、異世界で自身の価値を再発見していく成長の物語です。
って、よくある筋立てですよね。でも、ひと味もふた味も違うんです。どう違うのかは実際に読んで確かめてほしいところですが、一点だけ。等身大でリアルなキャラクターと緻密な世界観が、物語の中に絶妙なバランスで織り込まれていて、読んでいるといつの間にか引き込まれてしまうのです。どマイナー作品ですが、超おすすめですよ。(註・すでに絶版のようで、リンクは英語版のページにしています。)

茅田砂胡『デルフィニア戦記』

陰謀により王位を追われた若き王と、その周囲に集う仲間たちとの絆を描いた英雄譚です。

王位の奪還、混乱に乗じて攻め込んでくる隣国との戦いなどを通して、活劇としての面白さだけでなく、時に胸を熱くするような人間関係が表現されています。
まあ、なんというか、読者が面白いと感じるツボをよく知っている作家さんですね。サービス満点でたっぷり詰め込まれたエンタメのエッセンスを楽しんでいただけると思います。

以上、おためしあれ(^^)

 

作家のおすすめ小説「ホラー」編

私は、基本的にホラーというジャンルは好きではありません。読んでいて「怖い」と感じるのは構わないのですが、それはあくまでも物語のスパイスであり、主役たり得ないと思っているからです。怖さを感じさせることが目的で怖いシーンを書かれると、読んでいても不快なだけでちっとも面白みを感じられません。
そんな極度の臆病者である私が満足したホラー小説、気になりますよね?(^^)

スティーヴン・キング『ゴールデンボーイ』

第二次世界大戦中のナチスや強制収容所について興味を持つ少年。近所に住む老人がナチスの生き残りであることを知った少年は、老人から戦時中の残虐行為について話を聞くうちに……。ゆっくりと、しかし確実に壊れていく人間の姿を描いた問題作です。
誰しも、暴力的な衝動はどこかに抱えているものです。それが、ほんの些細なきっかけで歯止めがかからなくなっていく様子がショッキングです。
主人公の少年と一緒に読者自身も壊れていくような錯覚を、お楽しみください。

貴志祐介『クリムゾンの迷宮』

主人公の青年が意図せずに突如巻き込まれてしまったリアル・サバイバルゲーム。血に酔った他の参加者に追われる怖さ満載の、デスゲーム小説です。
デスゲームを扱った作品は多数ありますが、基本的にはすべてが同じ構造です。主人公は、最後まで生き残る。そんなわかりきった展開を飽きさせずに読ませるには、作者としてかなりの工夫が必要です。
この作品のキモは、なんといっても主人公を追ってくる敵。デスゲームに身を置くうちに、どんどん狂気の度を増していく追手、めちゃめちゃ怖いです。

以上、おためしあれ(^^)

作家のおすすめ小説「ミステリー」編

ミステリーの真髄は「サプライズ」である、と私の友人がかつて言っていました。読者をミスリードして、思いもよらない結末へといざなう。そんな驚きが、なによりも重要なのだそうで。

正直なところ、驚くような展開の小説は、いくつもあります。ですが、驚きだけの小説だと、「あーびっくりした。で、それがどうしたの?」という不満感しか残らないのです。
その意味では、私にとってサプライズという要素も小説を面白く見せる演出のひとつであり、中心にはなりえない要素なのです。
そんな、ミステリーにプラスαを求める私が選んだ作品は、以下の2作品です。

パーネル・ホール「探偵になりたい」

事故専門の調査員のもとに舞い込んだ、本物の探偵向けの仕事。もちろん依頼は断りました。しかし、その翌日に依頼人が死んだことを知って、調査に乗り出します。
この作品、とにかく主人公のキャラクターが魅力的なのです。恐妻家で、何事も控えめで臆病。ごく普通の小市民的な感性で事件に向かい合う姿が、共感を誘います。
おそらく探偵小説史上もっとも弱気な最弱主人公の、なんとも頼りない活躍をたのしめます。

今野敏「隠蔽捜査」

出世街道を進む警察庁キャリア官僚が事件解決に挑む、異色の警察小説。こちらも主人公のキャラクター造形が実に魅力的です。
保身のための事実隠蔽がまかり通る官僚の世界で、主人公はひたすら誠実に現実と向き合い続けます。その姿は、良く言えば矜持に満ちた合理主義者、悪く言えば堅物で不器用な変人。
この主人公が仕事と家庭とで散発する問題を解決すべく奮闘します。
こんな官僚ばかりだったら、この国も良くなるのに、と思わずにはいられません。
ドラマにもなったので、ご存知の方も多いはず。でも、ドラマよりも小説のほうが、私は好きです。

以上、おためしあれ(^^)