ホーム » 小説 » 小説の書き方 » 作家が教える文章技術上達のための4つのコツ

作家が教える文章技術上達のための4つのコツ

文章がうまくなりたいですか?

方法は簡単です。まずたくさん読んでください。そして、たくさん書いてください。

続けていれば、いつの間にかうまくなっています。投資した時間に応じて、必ず成長していきますので。

以上。
というだけでは、さすがに読んでくださっている方々に申し訳ありません。もう少しちゃんとご説明しましょう。
たとえばビジネスの文章であれば、結論を先に書く、とか、必要な情報を整理して箇条書きにする、とか、まあそんなテクニックはあるわけです。
同様に、散文を書く上でもいくつかのテクニックがあり、これを意識しながら書くことで比較的かんたんに上達できるのです。

文章技術上達のためのコツその1「目的」

文字、単語、文、段落、節、章……などなど、文章を構成する要素はさまざまです。
そのすべてには、必ず目的があるのです。
私の場合、文章全体の目的として「読者を泣かせたい」というものがあります。そこで、各章の目的は「泣かせるシーンを盛り上げる」ことになります。
とある作品の冒頭の章は、次のように定義しました。

『主人公と舞台の紹介。事件を常人には理解不能な方法でスピード解決する天才だが、欠点もあることを伝える⇨欠点の補完が終盤への盛り上がりを演出する重大要素』

章の目的が決まると、おのずと節、段落といった要素の目的も決まっていきます。最終的には、単語ひとつ、文字ひとつ、句読点や改行に至るまで、きちんと目的があってその位置に配置されることになるのです。書く以上は、なぜその位置に改行を入れたのか、合理的に説明できるくらいの意識づけが必要です。
ぜひ、すべての構成要素の目的を考えながら書いてみてください。

文章技術上達のためのコツその2「修飾語」

以下のふたつの文を読み比べてみてください。

『とある暑い夏の憂鬱な午後、太郎は滝のように吹き出した汗を青いタオル地のハンカチでぬぐいながら深いため息をついた』

『夏の午後、太郎はハンカチで汗をぬぐいながらため息をついた』

おわかりのように、どちらも同じシーンを描写したものですが、後者は修飾語を完全に取り払ってあります。こうして見ると、書かれた言葉の約半分が修飾語で構成されていることがわかります。よけいな修飾語は、文のリズムを崩し、主語と述語の関係をわかりにくくします。
夏は暑いに決まっていますし、ため息をつくのは憂鬱だからでしょう。こうした無駄は、どんどん削りましょう。
逆に、文章全体の目的の中で「青いハンカチ」が重要ならば、そこは「空のような青色のハンカチ」などというように修飾語を増やして強調するのも手です。
いずれにせよ、推敲の段階で余分な修飾語、蛇足の説明文などを削ると、すっきりとしたわかりやすい文章になります。3割を削除するくらいの気持ちで推敲してみてください。

文章技術上達のためのコツその3「ストップ」

書き手が必死な思いをして書いた文章を、読者はかる〜く読み飛ばします。私の経験から割り出した推測値ですが、読むスピードが遅い人で2割、普通の人で4割、速く読む人なら6割以上を、読み飛ばしていると思われます。
こうなると、書き手として大切なのは、「ここが重要ポイントですよ〜」と読者に伝えることになります。本文の冒頭で、ビジネス文章の例として「結論が先」とか「箇条書き」といったテクニックを紹介しましたが、それは「これが重要だからちゃんと読んでね」というアピール方法なのですね。
さて、散文における「ココ読め」アピールの技術を、私は個人的に「ストップ」と呼んでいます。読者の意識を、そこに誘導して釘づけにするという意味合いです。
ストップの要諦をかんたんに説明すると、「それまでと変える」の一言に尽きます。
改行を増やす、体言止めを使う、修飾語を増やす、カタカナを並べる、逆にひらがなを連ねる、読点を変わった位置にはさむ、などなど。
方法は無数にありますので、いろいろ試してみてください。
参考まで、私がストップをおぼえた頃に書いた小品をご紹介します。物語としては稚拙なので、そこはあまり突っ込まないでくださいね(^_^;)

文章技術上達のためのコツその4「ひらく」

以下のふたつの文章を読み比べてみてください。

「私は猫が好きだ。否、好きなどと云う言葉では、斯の猫への深い愛情を言い表す事は出来ない。私の猫への愛は、恰も砂漠で遭難した者が水を求めるが如き強烈な物なのである」

「わたしはネコが好きだ。いや、好きなどという言葉では、このネコへの深い愛情をいいあらわすことはできない。わたしのネコへの愛は、あたかも砂漠で遭難したものが水をもとめるがごとき強烈なものなのである」

ここでこんな漢字を使う? とか、この漢字をひらいて書くか? とか、異論はあると思いますが、あえて両極端にふってみました。
おわかりの通り、まったく同じ文章ですが、漢字の密度を変えてあります。その効果は、読んだみなさんが一番よくわかっていることでしょう。
とくに最近は、機械が勝手に変換してくれるおかげで、漢字が過剰に使われています。そこをあえて、勇気をもってひらいてみると、なんだか違った景色が見えてきませんか?
ぱっと見たときに、漢字とひらがなのバランスが良い文章は、私ならそれだけで読んでみたくなります(^^)

以上、4つのコツでした。
これらのコツを発見し、理解し、扱えるようになるまでに、飲み込みの悪い私は10年を費やしました(^^;)
これを読んだみなさんの時間が少しでも節約できるなら、それが何よりの喜びです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください