人間には「忘れる」という能力があり、時間がたつにつれて心の傷の痛みは薄れていく……なんて話を聞くことがあります。
が、実際には忘れているわけではなく、記憶が表層に浮かび上がってこないだけと言いますよね。認知症の人の記憶も、脳内に残っているのに、引き出せなくなっているだけなのだ、と。実際、トラウマになった出来事の記憶は、時間の経過にともなってフラッシュバックして蘇ってくる頻度は減ります。しかし、ひょんなきっかけで突然記憶が蘇り、心のやわらかい部分を鋭く刺します。その痛みはかつてとおなじく鮮明で、人を苦しめます。
常々、こうした負の記憶をピンポイントで消す技術ができないものかと夢想したりするわけですが、実際には苦い記憶だけを選択的に消すことは難しいでしょう。
苦くて甘い記憶を歌った『Sweet Memories』です。歌うのは、シンガポール出身の女性歌手、オリビア・オン。やわらかくささやくような歌声は、記憶の苦さをやわらげてくれるような気がしませんか?
小説「ハッカー探偵と魔剣テュルフング」では、第5章に登場します。失意のヒロイン・田上希美香が、癒しを求めてオリビアの歌声に耳を傾けます。
ヒロインは過去のトラウマと向き合い、事件解決のために再び立ち上がることができるのでしょうか。
って、エンタメ小説ですから、ちゃんと立ち上がりますよ。立ち上がって、敵と全力で戦って、そして……まさか? えっ! そんなことが!? という驚愕の展開が待っているわけですがw
ヒロインの戦いと活躍は、ぜひ本編でお確かめください(^^)