小説の舞台として、未来を選ぶことがあります。その際、未来の社会を夢想する場合にはさまざまなアプローチがあるわけですが、今回は格差社会が今以上に進んでいくとどうなるか? というアプローチで考えてみました。
格差がさらに広がると、富の集中がより極端になり、貧困層が増大します。貧困から抜け出すのは容易でなく、格差の固定化が進むでしょう。当然ながら、貧困層の出生率は低下して、人口はどんどん減少していきます。すると、労働力が減りすぎて、富裕層を支えきれなくなるはずです。
労働力の減少に対抗するために富裕層が編み出したシステムが、新封建制度です。
富裕層は広大な土地を所有し、それを貧困層に高額で貸します。地主の企業で仕事をすると賃貸料が割り引かれる制度があるため、貧困層は地主企業で働くことになります。結果として、貧困層は賃貸料の支払のために地主企業で死ぬまで労働奉仕する、というシステムができあがるのです。
こうして、地主が持つ広大な土地が領地、地主企業の社長が領主、貧困層が領民、とそれぞれ呼ばれる、新封建制度社会が誕生しました。
この新封建制度のシステムがさらに進化すると、どうなるでしょうか。
生活必需品、医療、娯楽、その他すべての商品やサービスの提供を、地主企業が担っていくことになります。領民は稼いだお金をすべて地主企業に吸い上げられて、手元には一銭も残りません。金銭の授受が挟まるものの、実質的には領民が一方的に労働力を領主に提供する、という形になるのです。
こうなると、領主の中には「領民は奴隷と同じで生殺与奪の権利は自分にある」という勘違いをする者が出てくることでしょう。
そんな暴君の下から逃亡する者たちと、それを連れ戻そうとする領主の手下。こんな構図が生まれます。
カクヨムで公開中の小説『操翼士オリオ』の第1章「情けは人のためならず」は、暴君のもとから脱走した借地人たちが、公明正大な領主が統治する土地を目指して逃避行をくりひろげます。彼らの行く手に立ちふさがる困難とその結末は……。
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