ミステリーの真髄は「サプライズ」である、と私の友人がかつて言っていました。読者をミスリードして、思いもよらない結末へといざなう。そんな驚きが、なによりも重要なのだそうで。
正直なところ、驚くような展開の小説は、いくつもあります。ですが、驚きだけの小説だと、「あーびっくりした。で、それがどうしたの?」という不満感しか残らないのです。
その意味では、私にとってサプライズという要素も小説を面白く見せる演出のひとつであり、中心にはなりえない要素なのです。
そんな、ミステリーにプラスαを求める私が選んだ作品は、以下の2作品です。
パーネル・ホール「探偵になりたい」
事故専門の調査員のもとに舞い込んだ、本物の探偵向けの仕事。もちろん依頼は断りました。しかし、その翌日に依頼人が死んだことを知って、調査に乗り出します。
この作品、とにかく主人公のキャラクターが魅力的なのです。恐妻家で、何事も控えめで臆病。ごく普通の小市民的な感性で事件に向かい合う姿が、共感を誘います。
おそらく探偵小説史上もっとも弱気な最弱主人公の、なんとも頼りない活躍をたのしめます。
今野敏「隠蔽捜査」
出世街道を進む警察庁キャリア官僚が事件解決に挑む、異色の警察小説。こちらも主人公のキャラクター造形が実に魅力的です。
保身のための事実隠蔽がまかり通る官僚の世界で、主人公はひたすら誠実に現実と向き合い続けます。その姿は、良く言えば矜持に満ちた合理主義者、悪く言えば堅物で不器用な変人。
この主人公が仕事と家庭とで散発する問題を解決すべく奮闘します。
こんな官僚ばかりだったら、この国も良くなるのに、と思わずにはいられません。
ドラマにもなったので、ご存知の方も多いはず。でも、ドラマよりも小説のほうが、私は好きです。
以上、おためしあれ(^^)